健康寿命と脳卒中
健康寿命とは重度の認知症や寝たきりにならず、介護を必要とせず自立して生きられる期間のことです。一方平均寿命とは0歳児が平均的に生存できる期間です。平均寿命と健康寿命との差は寝たきり状態での要介護の期間ということになります。2008年の日本人の平均寿命は男性79.0歳、女性86.2歳でした。WHOによると2007年の日本人の健康寿命は男性73.0歳、女性78.0歳だったそうです。すなわち寝たきり要介護期間は、男性で約6年、女性約8年ということになります。女性は長生きですが、健康寿命は男性に比べて短く、要介護状態にになりやすいといえそうです。平成10〜11年国民生活基礎調査によると、健康を阻害し、寝たきり状態にする4大要因は、脳卒中、認知症、骨折・転倒、老衰です。なかでも脳卒中は寝たきり原因の第1位で約40%を占めています。ちなみに認知症は10〜20%、老衰約15%、骨折・転倒約10%という割合です。福岡脳卒中データベース研究によると、脳卒中の危険因子として、頻度の高いものから順に高血圧、喫煙、脂質異常症(高脂血症や高コレステロール血症、低HDL血症)飲酒、糖尿病、心房細動が指摘されています。脳卒中の発症を予防し、寝たきりにならないようにするには、これらの危険因子の管理が重要です。


脳卒中の危険因子
(高血圧)血圧が高くなるほど脳卒中の発症率は高くなります。至適血圧(120/80mmHg未満)の人の脳卒中発症率を1とすると、140/90mmHg以上の人では2.5倍、180/110mmHg以上の人では6倍以上になります。降圧療法により脳卒中発症率が低下することがわかっています。
(糖尿病)糖尿病は脳梗塞の発症を増やし、発症した脳梗塞を重症化することが報告されています。血糖の厳密なコントロールは発症した脳梗塞の重症化を防ぐことができます。2型糖尿病の人では、血糖コントロールとともに、血圧を130/80mmHg未満に維持し、スタチンという種類の薬でコレステロールを抑制するとよいとされています。
(脂質異常症)コレステロールや中性脂肪などの脂質の異常は脳梗塞の発症率を高めます。スタチンによる治療により脳卒中発症率が低下することが報告されています。すでに脳梗塞を発症してしまった人では悪玉コレステロールを120mg/dl未満に抑制するように勧められています。
(心房細動)非弁膜性心房細動をもつ人の5%が毎年脳梗塞を発症し、心房細動を有する人の脳梗塞発症率は2〜7倍高くなると言われています。年齢とともに心房細動の有病率は増えます。心房細動に加えて、脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往、高血圧、糖尿病など、他の危険因子を合併すると一層脳梗塞の発症率が増加することが知られています。
(喫煙)喫煙は脳卒中、とくに脳梗塞とクモ膜下出血の危険因子です。脳梗塞発症の危険度は、男性喫煙者で1.66倍、女性喫煙者で1.57倍です。クモ膜下出血発症の危険度は、男性喫煙者で3.6倍、女性喫煙者で2.7倍になります。脳卒中の危険は喫煙本数が多いほど大きくなり、5〜10年間の禁煙により、危険度は低下します。受動喫煙も脳卒中の危険因子になるという報告があります。
(飲酒)飲酒は脳出血やクモ膜下出血といった出血性脳卒中の危険因子で、飲酒量がふえるとともに直線的に出血性脳卒中の発症率が高まることが知られています。特にクモ膜下出血の危険性が高まります。ただ、もし少量の飲酒(エタノール1〜149mg/週)にとどまれば脳梗塞の発症は全く飲酒しない人より39%低くなることが知られています(特にラクナ梗塞)。

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